環八


環八。

まだ20歳になったばかりの頃、あるフリーペーパー
に搭載されていた人つながりで憧れの画家さんがいた。
絵はもちろんだけど、彼の綴る日記を読むのが好きだった。
お会いしたことはないけれど、人柄が容易に想像出来るような
そんな丁寧で情景豊な文章を書く人である。

ある日、古いフィアットに乗って環八を走っていたら、、
という記事を読んでまだハタチそこそこの北海道のど田舎に住む私は
「東京=フィアットに乗る画家が走る環八」
フィアットに乗る画家を想像し、東京の環八通りにさらに憧れるのであった。


上京して一番にしたいこと。
それは、環八通りを車で走ること、と、北海道時代にお世話になっていた西荻にある
cdショップに行くこと。



幸い、環八通りは我が家から近いところを走っていてどこかに行くときに
使う通りなもんで、すぐに念願叶った。
朝、昼、夜、とどの時間を通ってもなんだか感傷的になりその画家を思い出しては
私もずいぶん遠くに来たもんだ、としみじみと車を走らせるのである。



その環八を通ってあるいは環七を通って吉祥寺に行き朝一番でダンディゾンのパンを
頬張りながらいつものショップ巡り。ついで西荻に向かいお気に入りのcdショップに
行き、器屋さんに行くのが定着しつつある。
電車で乗り継ぎ中央線沿いをお散歩するのも楽しいのだけど我が家からは環八を通り
あの画家に思いを馳せながらのドライブはなかなか病み付きになるものなのである。