雨の中で

いい夫婦の日はすき焼きを食べよう、とはcmにて。


去年のこの時期は所属する山岳会の納会で大好きなさいさんと
星野氏のことを話して涙流したり、おいしい牡蠣にホタテにお酒に
山男の山歌に酔いしれながら、あったかい暖炉の前で過ごした。
外は冷たい冷たい雨だったけれど、暖炉の中でぱちぱち木が燃える音を
聞きながらあったかい部屋で山の仲間と過ごす時間は、心も温かくするの
だった。

本当にいい日だった。

時を同じくして同じように思い出に浸る山女より電話がある。嬉しい。


銀杏並木は今が見頃、と思っていたけど、もう少し全体が黄色くなった方が
見頃なのか、と帰り道とぽとぽ歩きながら考えを改める。


今日は久々にカフェでお手紙を書いたりして過ごす。
北海道にいたころはぴゅいーとお気に入りのカフェにいけたけれど、東京では
電車に乗ってではないと行けない、のが少し遠のく理由である。

予報より遅くに降り始めた雨の中、していた腕時計がないことに気がつく。
足取りを早めて歩いた道や行ったお店に戻ったりカフェに電話をしたりして落ち着かない。


しばらく歩いたあと、落ち着いて、落ち着いて、と再度持ち物の中を探してみたら、
雑多な袋の中から出てきた。ゆるくていつのまにか外れて運良く袋に入っていたようだ。


冷たい雨、
いつだかの冷たい雨の日も、この街で私はひとり歩いていた。