夕刻には薄紅の雲


窓に激しく打ち付ける雨音で、朝早い時間に目が覚めた。

それでも、その音が心地よくて、ベッドの中でごろごろ過ごす。


えいっ、とベッドから出ても、雲が覆った空を窓越しに眺めた。


我に返って。

前日に作った大成功のトロトロのオムレツや用意していおいたちょっとしたおかずを
お弁当箱に詰め込んで、気分よく出勤の仕度をした。


「長靴があるからへいちゃらよ!」


と、こんなにも雨の日を楽しむ自分がいることに、いささか驚く。



数年前。
彼とお付き合いをしたばかりだった。
雨の日に、車の中で雨のことを話した。

彼は雨の日が大好きだ、と言っていた。雪の日が好き、とも。
私は雨の日は嫌い、と言った。



そんなことを思い出しながら、雨が降る朝をしばしの間、楽しんだ。


車のフロントガラスに激しく打つ滴は無数にもなり、小さな跡を残しては消えていった。